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中国の高速鉄道事故に日本との共通性を見る

朝日新聞WEBRONZA 2011年8月3日
 中国が国の威信をかけて建設した高速鉄道で、悲惨な衝突脱線事故が起きた。事故後、20時間で救出活動を打ち切ったとか、事故車両を穴を掘って埋めたとか、それに対して非難の嵐が起きると埋めた車両を掘り出したとか、事故原因が究明されていないのにすぐに運転再開したとか、それについては中国高速鉄道は最先端の技術があり絶対安全であるとか、実は制御システムに不備があってATCが働かなかったとか、…。

 具合の悪いことが後から後から次々と発覚し、中国当局がもみ消しに奔走するものの、ネット社会では一度流出した情報はあっという間に拡散してしまう。その結果、中国共産党や鉄道部がもがけばもがくほど、恥の上塗りをするだけであり、国際的かつ社会的評価は下がっていく。

 このようなニュースを見聞きして、「事故にあった人やその家族は気の毒だね」とか、「中国当局の隠蔽体質はひどいね」とか、「中国当局は人命なんてゴミのように思っているんじゃないの」とか、「中国の技術なんて、所詮モノマネ的なまがいモノなんだよね」とか、「中国の高速鉄道は危険な代物だよね」とか、筆者もちらっと思ったし、筆者の知る限りの日本の知人も、同じように「やっぱり中国なんてこんなものだよね」と思っているようだ。

 ところが、待てよ、これって中国だけのことか? 日本でも同じようなことが起きているじゃないか? と思い始めてしまった。

 そう、あの福島第一原発事故を巡る一連の騒動について、である。

 日本政府、内閣府の原子力安全委員会、経産省の原子力安全・保安院、および東電をはじめとする電力会社が、「絶対安全」と言い続けて、地震多発国・日本に、次から次へと54基もの原発を作ってしまった(中国が数年間で10,000kmに及ぶ高速鉄道網を作ってしまったように)。

 初期のころの原発は、米国GEの技術に完全に依存していた。つまり、米国産の原発技術を完全に自国の技術として定着させる前に、技術を輸入して原発を作った。今回、事故を起こした福島第一原発の1号機は、古いタイプのGE製である(中国はフランスや日本から技術を輸入して高速鉄道車両を製造した。今回、事故を起こした車両はフランス製と日本製だ)。

 東日本大震災で福島原発が事故を起こすと、やれ想定外の地震だったとか、やれ想定外の津波だったとか(だから非常用電源などが海側に並んでいたとか)、やれ全電源喪失が起こるはずはなかったとか、想定外のオンパレードになった(中国も最初、落雷が原因だと言い張っていた)。

 水素爆発やベントによって多量の放射性物質が飛び散っているにもかかわらず、折角長年に渡って100億円もの税金を投じて準備してきた緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の結果は殆ど開示しなかったとか、ひたすら「ただちに健康には影響がない」と言い続けてきたとか、被曝線量の上限は年間20mSvにしましょうと決めたら内閣参与が辞めちゃったとか、速やかに情報を開示するように国際批判を浴び始めたら次々と怖そうなデータが出てきたとか(中国当局も穴を掘って事故車両を埋めて隠蔽しようとしたが翌日掘り出したように)。

 そして、九州電力が「やらせメール」事件を起こしたと思ったら、経産省の保安院による過去の原発シンポジウムで「やらせ質問の要請」だの「サクラの電力社員出席要請」だのが、次々と発覚した(中国当局は、「否定的な報道をしないように」とか、「美談を報道せよ」とか、メディアに圧力をかけた )。

 どうも、中国の高速鉄道事故も、日本の福島原発事故も、事故を巡る騒動や事故原因の本質的なところは、ほとんど同じように見える。読者諸賢はどう思われるでしょうか。

 しかし、これだけは言える。

 現在、中国では13基の原発が稼働中で、32基の新規建設を承認し、その内28基は建設中であり、建設承認の前期作業に入った原発は38基ある(つまりこのままいくと70基はできてしまう)。そして、中国政府は、2050年までに230基の原発を稼働させる予定だという。

 このような数字を見て「怖い」と思わない人はいないのではないか。だから、中国の原発推進には、反対です。