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公務員人件費を2割以上削減する方法

朝日新聞WEBRONZA 2012年5月24日

 民主党はマニフェストで、「国家公務員の人件費を2割削減する」と表明した。一体いつ、どのように実行するのか(早くやれよ)と思っていたら、先月、2013年度に新規採用する国家公務員数を政権交代前の09年度に比べ56%削減すると発表した。

 この閣議決定を聞いたときは呆れてものが言えなかった。これでは、ただでさえ就職難の若者たちを窮地に追いやるだけだ。現在しかるべきポストに着き、高給を得ている公務員をざっくり削減しなければ意味がない。

 では、そのような既得権益にしがみついている現役の公務員をどうやって削減したらいいか? その方法を最近、自分の体験から思いついた。以下にその体験談と、公務員費2割削減の妙案を示そう。

 3月に千葉県のとある零細企業(A社)からコンサルタントの依頼を受けた。資金力に余裕がないA社は、「公益財団法人 千葉県産業振興センター(以下、振興センター)」を利用するという提案をしてきた。そこに私が専門家登録をすれば、A社は振興センター経由で私のコンサルを受けることができる。コンサル費用のほとんどは振興センターが負担する。

 「じゃあ、それで行きましょう」と返事をし、A社は振興センターに連絡をした。しばらくすると、振興センターから電子メールが届き、経歴書などの提出を求められた。その上で、千葉の幕張にある振興センターで面談すると通知された。

 私は片道2時間かけて、幕張に面談に出向いた。そして、振興センターのコンサル・システムに大いに驚かされることになった! 

 担当者は開口一番、「既に650人の専門家がいるので、あなたにコンサルの仕事があるかどうかはわからない」と勿体をつけてきた。そのくせ、「コンサル費用は1日当たり47,250円+旅費実費」と相場よりも随分安い。また、「千葉の房総半島先端の館山などに行ってもらうことはできますか?」ということを聞かれた。私としては、A社のコンサルをして(助けて)やりたいだけなので、それ以外のコンサルはやりたくない旨を申し上げたが、担当者は憮然とした表情だった。

 担当者にしてみると、「仕事をあなたに回すかどうかの決定権は自分にあるのに、この態度は一体何だ?」と思ったのかもしれない。しかし、この振興センターの財源の半分以上は国からの補助金、つまり税金であり、この担当者の態度こそ一体何だと私は思う。

 その後、4月から1年のコンサル契約をしたら、「1年間で達成するべき目標を明記して頂きます」(止むを得ない)、「毎月レポートを出してもらいます」(仕方がない)、「来年度末に報告書を出してもらいます」(それも止むを得ない)と続き、「その報告書に基づいて審査し、当初の予定通りの実績が挙げられたことを確認した上で、報酬と旅費を支払います」と担当者は言った。

「えっ?何だって?」

 聞き間違いかと思って、もう一度確認したがこの通りである。つまり、千葉県産業振興センターでは、「コンサル費用も旅費も1年後の後払い」であり、「コンサル完了後に報告書を提出し、その内容如何によっては払わない」と言っているのである! コンサルは当面、霞を食って生きていけということか?
 

千葉県産業振興センターのオフィスは、右のマリブイースト棟23階にある

 
 驚き、呆然としながら、2時間の道のりを帰宅した(結局この旅費も払われなかった)。沸々と怒りが込みあげ、そして、それが一つのアイデアに昇華した。

 千葉県の職員全員は、まず年度初めに「今年はこれこれの仕事を行う」とコミットする → 毎月進捗をレポートにして公開する → 年度末に報告書を作成してこれも公開する → 報告書を第三者委員会が審査する → 適正と認められた者にだけ後払いで年俸や諸経費を支払う、とするべきだ。

 どうです? 良い考えでしょう。

 そして、千葉県だけでなく、国会議員をはじめとして、全国に400万人いる公務員全員に、このシステムを適用するのである。2割削減なんて、あっという間に出来るだろう。

「無茶だ」「できない」なんて言わせない。現実に、千葉県でコンサルを行っている者は、このシステムを受け入れて仕事をしているのだから。

 後日談だが、先日、千葉県産業振興センターより通知があり、今年度は予算が厳しいため、「あなたのコンサルの仕事はない」とのことだった。このやり方も公務員費削減に応用できると思った。