最もストレスが低い職業と高い職業
朝日新聞WEBRONZA 2014年1月31日
米国経済誌ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に新年早々、「ストレスが最も高い職業と最も低い職業ランキング」という面白い記事が掲載された。
米求人情報サイトのキャリアキャスト社が、米国の200種類の職業を対象に、肉体的なつらさ、締め切りの有無、競争の激しさ、出張の頻度など、11のストレス要因を点数化して評価した。合計点数が高ければ高いほど、ストレスが大きいことを意味する。
米求人情報サイトのキャリアキャスト社が、米国の200種類の職業を対象に、肉体的なつらさ、締め切りの有無、競争の激しさ、出張の頻度など、11のストレス要因を点数化して評価した。合計点数が高ければ高いほど、ストレスが大きいことを意味する。
まず、ストレスが高い職業のランキングトップ10を見てみよう(図1)。
1位:軍の下士官、2位:軍の将官、3位:消防士、4位:パイロットと、肉体的なつらさが大きい職業が上位を占めている。栄えある(?)ランキングトップになった軍の下士官は、将官と兵の間で板挟みになる精神的ストレスが予想されるほか平均年俸も2万8840ドルと低く、かなりつらい職業であると言わざるを得ない。
5位から8位には、イベントコーデイネーター、広報部門の幹部、新聞記者など、締め切りが厳しい上に競争も激しい職業が並んでいる。
私は新聞記者ではないが、このWEB RONZAを含めて現在6本の連載記事を持っており、1カ月に8回の締め切りがある。私のストレスも相当高い状態にあるかもしれない。そして、私の原稿をもとにWEB RONZA(だけでなく紙の朝日新聞も)を編集・発行している新聞社の方々は、私以上にストレスフルだろう(お疲れ様ですね)。
意外なのは9位に公務員がランクインしていることだ。日本なら間違いなくストレスの低い方に入る。一旦採用されれば定年まで安泰であり、退職金も退職後の年金も充実しているからだ。WSJによれば、米国では景気後退期に市役所などは採用を行わず人員補強がなく、しかし給料は安い。さらに、クレームの多い住民対応などがストレスの要因になっているようだ。
今度はストレスが低い方のランキングトップ10を見てみよう(図2)。
5位から8位には、イベントコーデイネーター、広報部門の幹部、新聞記者など、締め切りが厳しい上に競争も激しい職業が並んでいる。
私は新聞記者ではないが、このWEB RONZAを含めて現在6本の連載記事を持っており、1カ月に8回の締め切りがある。私のストレスも相当高い状態にあるかもしれない。そして、私の原稿をもとにWEB RONZA(だけでなく紙の朝日新聞も)を編集・発行している新聞社の方々は、私以上にストレスフルだろう(お疲れ様ですね)。
意外なのは9位に公務員がランクインしていることだ。日本なら間違いなくストレスの低い方に入る。一旦採用されれば定年まで安泰であり、退職金も退職後の年金も充実しているからだ。WSJによれば、米国では景気後退期に市役所などは採用を行わず人員補強がなく、しかし給料は安い。さらに、クレームの多い住民対応などがストレスの要因になっているようだ。
今度はストレスが低い方のランキングトップ10を見てみよう(図2)。
1位から順に、聴覚訓練士、ヘアスタイリスト、宝石職人、終身在職権付きの大学教授、仕立屋、栄養士、医療事務管理士、図書館員と並んでいる。
この中でも、聴覚訓練士と大学教授は、ストレスも低い上に給料も高いことから、WSJはお勧めの職業だと結論している。
聴覚訓練士は聞きなれない職業なので私はコメントできないが、終身在職権付きの大学教授が「お勧めの職業」というのは同感だ。米国以上に日本の大学教授は低ストレスだろう。一旦その座に就いてしまえば、競争もなく、仕事の負担も小さく、それでいて社会的地位は高いからだ。
私は2003~2008年の5年間、同志社大学の経営学の教員を務めたが、残念ながら任期付きだったのでストレスは高かった。しかしそのときに、人文社会系のパーマネントの教授たちの多くは、ストレスとは無縁の世界で生きていることを知った。理工系と違って実験がないから毎日大学に出てくる必要もなく、研究費も少額で済むから金策に走り回らなくても良い。だから中には、教授会のある日に講義を行うようにして、1週間に1日しか大学に来ない教授も珍しくない。しかも平均給料は破格に高く、定年は70歳である(同志社大学の場合)。日本でランキングを作成したら、大学教授が1位になるのではないか(特に人文社会系)。
一方、ランキングの10位に、機械工が入っているが、その理由はわからない。日本ならばストレスの高い方にランクされるのではないか。現在日本では、モノづくり関係の職業で食っていくのは相当に厳しい。特に中小企業は、成長著しいアジアの低コスト製品の影響で窮地に陥っているところが多い。
中小企業の機械工だけでなく、大手の技術者も大変である。ソニー、パナソニック、シャープなどの大手家電メーカーが、ここ数年で万人規模のリストラを行っているからだ。
半導体ではエルピーダが倒産して米マイクロンに買収された。合理化のために、いつ技術者が職を失うかわからない。また、破綻寸前となったルネサスは、産業革新機構を中心とする官民連合に買収され1万人を超える早期退職者を出した。さらに退職者は増える模様である。
加えて、ルネサスの中の鶴岡工場(旧NEC)は閉鎖が決まった後に、ソニーが買収に乗り出した。一方、パナソニックの半導体工場は身売りに出て、イスラエル国籍のタワージャズに買収されることになった。これらの半導体工場の技術者にとっては、今後自分の身がどうなるかを考えると心中穏やかではないだろう。
もしかしたら現在の日本では、半導体などエレクトロニクス関係の技術者が、最もストレスの高い職業かもしれない。自分の会社がどうなるかわからないと言ったストレスから解放されるには、日本でエレクトロニクスの技術者以外の仕事に就くか、または同じ仕事を求めるなら海外に移住するしかない。しかしそのためには、また新たなストレスを生じることになる。いずれにせよストレスフリーになることはあり得ない。どのストレスを選択するかは、貴方次第だ。
聴覚訓練士は聞きなれない職業なので私はコメントできないが、終身在職権付きの大学教授が「お勧めの職業」というのは同感だ。米国以上に日本の大学教授は低ストレスだろう。一旦その座に就いてしまえば、競争もなく、仕事の負担も小さく、それでいて社会的地位は高いからだ。
私は2003~2008年の5年間、同志社大学の経営学の教員を務めたが、残念ながら任期付きだったのでストレスは高かった。しかしそのときに、人文社会系のパーマネントの教授たちの多くは、ストレスとは無縁の世界で生きていることを知った。理工系と違って実験がないから毎日大学に出てくる必要もなく、研究費も少額で済むから金策に走り回らなくても良い。だから中には、教授会のある日に講義を行うようにして、1週間に1日しか大学に来ない教授も珍しくない。しかも平均給料は破格に高く、定年は70歳である(同志社大学の場合)。日本でランキングを作成したら、大学教授が1位になるのではないか(特に人文社会系)。
一方、ランキングの10位に、機械工が入っているが、その理由はわからない。日本ならばストレスの高い方にランクされるのではないか。現在日本では、モノづくり関係の職業で食っていくのは相当に厳しい。特に中小企業は、成長著しいアジアの低コスト製品の影響で窮地に陥っているところが多い。
中小企業の機械工だけでなく、大手の技術者も大変である。ソニー、パナソニック、シャープなどの大手家電メーカーが、ここ数年で万人規模のリストラを行っているからだ。
半導体ではエルピーダが倒産して米マイクロンに買収された。合理化のために、いつ技術者が職を失うかわからない。また、破綻寸前となったルネサスは、産業革新機構を中心とする官民連合に買収され1万人を超える早期退職者を出した。さらに退職者は増える模様である。
加えて、ルネサスの中の鶴岡工場(旧NEC)は閉鎖が決まった後に、ソニーが買収に乗り出した。一方、パナソニックの半導体工場は身売りに出て、イスラエル国籍のタワージャズに買収されることになった。これらの半導体工場の技術者にとっては、今後自分の身がどうなるかを考えると心中穏やかではないだろう。
もしかしたら現在の日本では、半導体などエレクトロニクス関係の技術者が、最もストレスの高い職業かもしれない。自分の会社がどうなるかわからないと言ったストレスから解放されるには、日本でエレクトロニクスの技術者以外の仕事に就くか、または同じ仕事を求めるなら海外に移住するしかない。しかしそのためには、また新たなストレスを生じることになる。いずれにせよストレスフリーになることはあり得ない。どのストレスを選択するかは、貴方次第だ。