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新聞の電子版普及に必要なこととは?

朝日新聞WEBRONZA 2014年5月30日

 4年前、何処にいても新聞を読みたいと思って、iPhoneを買った。そして、紙と電子版のダブルコースを契約した。しかしどうにも電子版の新聞が読みにくくて、折角買ったスマホは家内の持ち物となってしまった。電子版は、時々、PCでチラミしたり、検索したりする程度である。

 3年前、多くの友人から、「Kindleは反射光方式で目に優しく、タダの電子書籍もたくさんあるし、常に数百冊を手元においておけるよ」と勧められて、電子ブックリーダーを買った。しかし、仕事に使う本でタダのものはまったくなく、その上、新聞と同様、どうにも読みにくくて、今は休眠中である(家内にも使って貰えない)。

 結局、今も昔と同様に、紙の新聞を読み、紙の本を読んでいる。スマホやタブレットの基幹部品であるプロセッサやメモリなどの半導体については一丁前に記事を書いているくせに、それら完成品を使いこなすことが、まるでできないでいる。

 「嗚呼(ああ)、俺はデジタル機器を使えないダメ人間なのか?」と長らく思っていた。

 そのようなときに、姫野カオルコ氏の『小さいだけが大事か』という新聞記事(日経新聞3月30日)を読んで大いに共感し、自分はダメ人間ではない(かもしれない)という勇気を得た(以下、「」内は記事の抜粋)。

 「電子ブックリーダーは、“ブックをリードする道具”なのに、ある要素が決定的に欠けている」「それは、“長文が読みやすい”という要素である」。まったく同感である。

 長文が読みにくい理由は、「本を読む際に人間は、2ページくらいをザっと見通しつつ、随所に目(脳)をズームアップさせて読んでいく」からである。「それなのに、2ページを表示できるサイズの製品が一つもない」。

「たしかに旅や出張などの外出時に読むには小さい方が便利」だが、「世の中の”よく読む人“は自宅で読書をしないのか。ひっきりなしに移動しているのか」「学生や先生、研究者、主婦、に入院中・自宅療養中の人、等々、みなみな車内や機内でのみ読みたいのだろうか」。

 よくぞ言ってくれました。まったくその通りである。自営業の私には、毎日の通勤は無い。仕事のために読む本は多いが、ほとんどの場合、自宅の机でじっくり読む。そうしたとき、既存の電子ブックリーダーは、小さすぎて読みにくいのである。

 姫野氏は言う。「持ち運べる小さいサイズの電子ブックリーダーもあってほしい。だが、家においておく、2ページが見渡せるサイズの電子ブックリーダーも作ってくれていいではないか」。

 この主張を新聞の電子版に対しても適用したい。新聞用の電子リーダーは、ブック用よりもさらに大きいことが必要だ。

 人間は新聞を読む際、まず、大見出しを見る。その後、中見出し、小見出しを見てから本文を読む。姫野氏が読書について分析したように、紙面全体をザっと見通しつつ、随所に目(脳)をズームアップさせて読んでいく。

 読書と異なることもある。読書は基本的に全文を読むが、新聞は、興味がある記事しか読まない。最初から最後まですべてを読むと言うことは、まず無い。その記事を読むか読まないかは、大見出しや中見出しを見て即断する。こうした作業はスマホ程度のサイズでは、まったく不可能である。これを可能にするためには、新聞1面が一度に表示できるサイズ(40cm×40cm位)のリーダーが必要だ。

 私の記憶によれば、新聞の電子版購読者の多くが、紙とのダブル購読であったように思う。その原因は、スマホやタブレットによる電子版だけでは心許ないからではないか。私の周りでも、サラリーマンの場合、出勤前に紙をパラパラめくって大見出しなどを見て、気になった記事を電車の中で読む、という人が多い。

 紙との併用ではなく、新聞の電子版を本格的に普及させるためには、新聞が読みやすい電子リーダーが必要だろう。それは、今までにない大型電子リーダーであると考える。どこか作ってくれないか?