希望退職の鉄則:転職先が決まるまで辞めるな
朝日新聞WEBRONZA 2014年2月14日
ソニーが5000人を削減するリストラを発表した。私の周りの半導体や電機関係者の間では、誰が早期退職したとか、誰がどこに転職したとかいう話が飛び交っている。嗚呼、またこれで悲惨な技術者が増えると思うと憂鬱な気分になる。
先日も日立時代の元上司から、リストラに関する話を聞かされた。2013年にルネサスエレクトロニクスを希望退職した50歳の半導体技術者が、転職先が見つからず困っているという。そして、この元上司に「何とか転職先を紹介してもらえないか」と泣きついてきたという。
「どう思う?」と聞かれて、私はちょっと冷酷のようだが「退職してから転職先を探そうとしても無理ですよ。先に転職先の内定をもらっておくべきで、残念ながら順序が間違っています」と答えた。元上司も、「そうだよな」とうなずいた。「順番が間違っている」ことについて、もう少し、詳しく説明しよう。
アベノミクス効果なのか、多くの半導体や電機メーカーの業績が上向き、黒字回復しつつある。にも関わらず、冒頭のソニーのように、2011年以降に相次いでいる各社のリストラが止む気配は、まるでない。
先日も日立時代の元上司から、リストラに関する話を聞かされた。2013年にルネサスエレクトロニクスを希望退職した50歳の半導体技術者が、転職先が見つからず困っているという。そして、この元上司に「何とか転職先を紹介してもらえないか」と泣きついてきたという。
「どう思う?」と聞かれて、私はちょっと冷酷のようだが「退職してから転職先を探そうとしても無理ですよ。先に転職先の内定をもらっておくべきで、残念ながら順序が間違っています」と答えた。元上司も、「そうだよな」とうなずいた。「順番が間違っている」ことについて、もう少し、詳しく説明しよう。
アベノミクス効果なのか、多くの半導体や電機メーカーの業績が上向き、黒字回復しつつある。にも関わらず、冒頭のソニーのように、2011年以降に相次いでいる各社のリストラが止む気配は、まるでない。
表1に示した通り、半導体では、ルネサスが1万人以上の希望退職を出したが、2015年度までにさらに5400人を削減すると発表している。パナソニックは半導体関係社員を1万4000人から7000人に削減すると発表し、富士通セミコンダクターは既に1963人が希望退職している。電機では、ソニー、NEC、TDKが1万人、富士通が5000人規模の人員削減を発表し、既にシャープやリコーでも数千人が希望退職している。公表された数字だけでも、半導体は2万5000人以上、電機などは5万人以上の社員が職を失ったか、失いつつある。
私は2000年のITバブル崩壊の時に早期退職勧告を受け、2002年に日立を退職した。この時のリストラも酷かったが、ここ数年はそれを遥かに上回る厳しさとなっている。半導体や電機の技術者にとっては受難の時代だ。
リストラに遭った先輩(?)として、今その苦境に直面している技術者にアドバイスするならば、まず第1に、「転職先の内定をもらうまで辞めるな」と言いたい(既に、辞めてしまった人には後の祭りだが)。
私は、早期退職勧告を受けてから転職活動を始め、22通の履歴書を送ったが、40歳を超えていたために、面接にすらたどり着けなかった。23通目の企業でようやく内定をもらったが、既に、早期退職の受付が終了していたため、自己都合退職を余儀なくされた。早期退職制度を利用していれば3000万円以上もらえるはずだった退職金は、たったの100万円になってしまった(WEBRONZA2013年7月16日『そうか、俺は社長に謝ってほしかったんだ』に詳述)。
しかしそれでも、割増退職金をもらって、退職してから転職先を探すより、この方がずっと良かったと思っている。離職期間が長引くほど、転職が難しくなるからだ。
まともな企業は、離職期間がある人を雇おうとしない。仮に雇ってもらえる場合でも、給料は離職期間に反比例する。だから、割増退職金を棒に振ろうと、まずは転職先の内定をもらってから辞めるべきなのだ。元上司に泣きついてきた50歳の技術者のように、年俸2年分の割増退職金をぶら下げられると、ついつい、心は揺らいでしまうが、辞めてから探そうとしても次の職はなかなか見つからない。転職できなければ割増退職金は数年で底をつく。離職期間が長びけば就職は一段と困難になり、蓄えもないという最悪に事態を招くのである。
第2に、「辞めない選択もある」と言いたい。「肩たたき」に遭い、部下も仕事も取り上げられたら、転職するしかないと思うかもしれない。しかし、転職市場には半導体や電機の技術者が10万人規模で溢れかえっている。ある求人サイトによれば、1人の半導体技術者の求人に100人が殺到するそうだ。
つまり、今と同じ仕事ができる会社に転職できる可能性は極めて小さい。仮に、何かしらの職が見つかったとしても、給料は半分以下になるかもしれない。ならば、窓際族になろうとも、今の会社にしがみついていた方がマシである。幸い日本の労働法では、社員を理由なく解雇することはできないことになっている。
しがみつく生き方を選択した場合、最も邪魔なのがプライドだ。高学歴、大企業、課長や部長の職位、最先端の技術をやってきたという自負、そして高年俸。プライド故に「そんな窓際族みたいな生き方はできるか!」と思ってしまう。しかし辞めたところで、プライドが高いと転職活動でも「そんな仕事…」「そんな会社…」「そんな役職…」「そんな安月給…」と、えり好みしているうちに、浪人生活がいたずらに長引くことなる。
結局、第3のアドバイスは、「プライドを捨てよ」ということだ。プライドを捨てれば、窓際生活すら「何の責任もなく、お給料がもらえて、楽ちん」と思えるかもしれない。転職する際にも、「これもできる、あれもできる」と幅を広げられるのではないか。
いずれにせよ、半導体や電機の技術者にとっては受難の時代になってしまった。したたかに生き抜いて欲しいと願わずにはいられない。
私は2000年のITバブル崩壊の時に早期退職勧告を受け、2002年に日立を退職した。この時のリストラも酷かったが、ここ数年はそれを遥かに上回る厳しさとなっている。半導体や電機の技術者にとっては受難の時代だ。
リストラに遭った先輩(?)として、今その苦境に直面している技術者にアドバイスするならば、まず第1に、「転職先の内定をもらうまで辞めるな」と言いたい(既に、辞めてしまった人には後の祭りだが)。
私は、早期退職勧告を受けてから転職活動を始め、22通の履歴書を送ったが、40歳を超えていたために、面接にすらたどり着けなかった。23通目の企業でようやく内定をもらったが、既に、早期退職の受付が終了していたため、自己都合退職を余儀なくされた。早期退職制度を利用していれば3000万円以上もらえるはずだった退職金は、たったの100万円になってしまった(WEBRONZA2013年7月16日『そうか、俺は社長に謝ってほしかったんだ』に詳述)。
しかしそれでも、割増退職金をもらって、退職してから転職先を探すより、この方がずっと良かったと思っている。離職期間が長引くほど、転職が難しくなるからだ。
まともな企業は、離職期間がある人を雇おうとしない。仮に雇ってもらえる場合でも、給料は離職期間に反比例する。だから、割増退職金を棒に振ろうと、まずは転職先の内定をもらってから辞めるべきなのだ。元上司に泣きついてきた50歳の技術者のように、年俸2年分の割増退職金をぶら下げられると、ついつい、心は揺らいでしまうが、辞めてから探そうとしても次の職はなかなか見つからない。転職できなければ割増退職金は数年で底をつく。離職期間が長びけば就職は一段と困難になり、蓄えもないという最悪に事態を招くのである。
第2に、「辞めない選択もある」と言いたい。「肩たたき」に遭い、部下も仕事も取り上げられたら、転職するしかないと思うかもしれない。しかし、転職市場には半導体や電機の技術者が10万人規模で溢れかえっている。ある求人サイトによれば、1人の半導体技術者の求人に100人が殺到するそうだ。
つまり、今と同じ仕事ができる会社に転職できる可能性は極めて小さい。仮に、何かしらの職が見つかったとしても、給料は半分以下になるかもしれない。ならば、窓際族になろうとも、今の会社にしがみついていた方がマシである。幸い日本の労働法では、社員を理由なく解雇することはできないことになっている。
しがみつく生き方を選択した場合、最も邪魔なのがプライドだ。高学歴、大企業、課長や部長の職位、最先端の技術をやってきたという自負、そして高年俸。プライド故に「そんな窓際族みたいな生き方はできるか!」と思ってしまう。しかし辞めたところで、プライドが高いと転職活動でも「そんな仕事…」「そんな会社…」「そんな役職…」「そんな安月給…」と、えり好みしているうちに、浪人生活がいたずらに長引くことなる。
結局、第3のアドバイスは、「プライドを捨てよ」ということだ。プライドを捨てれば、窓際生活すら「何の責任もなく、お給料がもらえて、楽ちん」と思えるかもしれない。転職する際にも、「これもできる、あれもできる」と幅を広げられるのではないか。
いずれにせよ、半導体や電機の技術者にとっては受難の時代になってしまった。したたかに生き抜いて欲しいと願わずにはいられない。